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「早春にロシアを歌う」開催レポート
2018年
3月22日(木)19:00開演(18:30開場)
会場:
カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」

 ロシアに関係する音楽家・音楽学者などで構成されている『日本・ロシア音楽家協会』のメンバーによるコンサートが開催され、『第2回ロシア声楽コンクール』プロフェッショナル部門(一般)の入賞者3名を含む6名が出演しました。

 まずはコンクールの入選者、小高深雪さん。ニコラエフ〈ごめんなさい〉〈詩人はいません!〉〈ああ、長い間、私は夜の静寂にいる〉、チャイコフスキー〈私は野の草ではなかったか〉。ドラマティックな1曲目、伸びやかに歌う3曲目など、異なる表情を持つ4曲を悠々と披露されました。

 山脇美佐さんはロシア歌曲の先駆者、故・小野光子氏に師事。チャイコフスキー〈憧れを知る者のみが〉、ラフマニノフ〈私は辛い中で愛した〉、ボロディンは《イーゴリー公》より〈コンチャコフナカヴァティーナ〉、ヴェルストフスキー〈老いたる夫〉の4曲を披露されました。美しいメロディーに乗せ、寂しい心情を感傷的に歌った1曲目が印象的です。

 前半最後は、コンクール第3位の関川志保さんのラフマニノフ《12のロマンス》より〈ここはすばらしい〉、ストラヴィンスキー《うぐいす》より〈うぐいすの歌〉、リムスキー=コルサコフ《サルタン帝物語》より〈皇子様私の救い主〉。ピアノ編曲版としても知られるラフマニノフ作品はロマンチックながら哀愁を宿した旋律で、伴奏とともに神聖な雰囲気を作りました。

 休憩を挟み、コンクール優勝者、渡部智也さんの登場です。ショスタコーヴィチ〈喜びの歌〉、ダルゴムィシスキー〈粉屋〉、ムソルグスキー《ボリス・ゴドノフ》より〈ボリスの死〉を披露。簡単な演技も付いた情感のこもった熱演で、歌唱後には会場から賞賛の声が上がります。

 金野英里さんは、ラフマニノフ〈彼らは答えた〉〈彼女に〉、チャイコフスキー〈教えて、木陰で…〉〈フローレンスのメロディー(ピンピネッラ)〉を披露。4曲目の心地よいワルツは、明るい部分としっとりとした部分の対比が美しかったです。

 浦野智行さんはムソルグスキー〈あなたがたにとって愛の言葉が何でしょう?〉〈眠れ農民の子よ〉と、《ボリス・ゴドノフ》より、〈私は最高の権力を得た〉の3曲。大地主の息子として生まれたムソルグスキーは、農家の子どもと遊ぶことが好きで、自身の作品にも農民や市民の心情を細かく描写しています。「神様に見守られて、いい夢を見ておくれ」と温かく歌われた2曲目の最後の節は、とりわけ感動的でした。

 ロシア人作曲家による交響曲やバレエ音楽などとは違い、歌曲は取り上げられる機会が多いとは言えません。名曲も多いロシア歌曲。今後も継続的に取り上げていただきたいと感じました。

(R.K.)

 

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