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セルゲイ・クドリャコフ ピアノリサイタル開催レポート
Sergey Koudriakov Piano Recital(日本・ロシア音楽家協会 2013-I)
2013年11月7日(木)19:00開演(18:30開場)
会 場:カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ

 

 

 ロシアのピアニスト、セルゲイ・クドリャコフさんのピアノリサイタル。日本・ロシア音楽家協会が、今年2013年に開催するリサイタルの第一弾です。クドリャコフさんはモスクワ音楽院教授として教鞭をとる傍ら、ヨーロッパ、アジア、南米各地で精力的に演奏活動を行っている気鋭のピアニスト。その幅広いレパートリーの中から、当夜はロシア音楽の魅力がいっぱい詰まったプログラムが披露されました。

 前半はバレエ音楽から。ハチャトゥリアンの「スパルタクス」より『フリギアとスパルタクスのアダージョ』は、古代ローマ時代の奴隷の反乱を題材にしたバレエ「スパルタクス」で踊られる有名なパ・ド・ドゥで演奏される音楽です。空気に溶けそうな繊細なトリルから始まり、やがては高らかに愛を歌いあげる、まさにロマンティック&ドラマティック。

 続いて、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」からの10の小品Op.75は、プロコフィエフの音世界が集約された傑作です。モンタギュー家とキャピレット家の諍いの犠牲になってしまった、若い二人の悲恋。壮麗でグロテスクな舞踏会の音楽、ピュアでロマンティックな愛の音楽、目まぐるしく舞台を行き交うたくさんの登場人物達……。バレエのシーンが浮かび上がってくるような、迫真の演奏でした。何より、その美音に脱帽。

 後半は、日本・ロシア音楽家協会の第2代会長だった松村禎三の「ギリシャによせる2つの子守唄」から。1曲目はペダルの残響が幻想的な世界を表出。夢の中を彷徨うかのようでした。2曲目は繊細な色彩の淡水画を思わせました。日本の作曲家も凄いです!

 続いてスクリャービン。「4つの前奏曲Op.22」でその官能的な響きに酔いしれ、「左手のための2つの小品(前奏曲、夜想曲)Op.9」で、複雑な音構造に、本当に左手だけで弾いているの?と驚愕。ちなみにこの夜想曲ほど、切なく胸を焦がす曲はない!と筆者は思います。

 ラストは極めつけ、ラフマニノフの傑作選。「絵画的練習曲集 Op.39」より第5番でそびえ立つ巨大な音楽に圧倒され、「3つの前奏曲Op.32_10、23_4、23_5」で、果てしなくロマンティックで雄大なスケールの音楽に酔いしれました。会場からは盛大な拍手が!

 アンコールはチャイコフスキーの「四季」より『舟歌』、そしてスクリャービン「エチュードdes-moll」。ロシア音楽の魅力を十分に堪能した、素晴らしい夜となりました。

(H.A.)

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